【離婚】不倫相手に対する離婚慰謝料請求

2019-03-28

不貞行為が原因で離婚した場合,不貞行為をされた夫婦の一方は,不貞行為をした夫婦の他方とその相手方に対し,慰謝料請求することが考えられます。
不貞行為が原因で離婚した場合の慰謝料については,①不貞行為による精神的苦痛に対する慰謝料を請求する考え方(不貞慰謝料)と,②離婚に至ったことによる精神的苦痛に対する慰謝料を請求する考え方(離婚慰謝料)があります。
①と②では,消滅時効の起算点や遅延損害金の起算日に違いがあり,①では不貞行為をした時が起算点・起算日となるのに対し,②では離婚をした時が起算点・起算日となるという違いがあります。そのため,例えば,不貞行為を知ってから3年経過した後に慰謝料請求する場合には,不法行為の消滅時効の期間(民法724条)が経過しているため,不貞慰謝料ではなく,離婚慰謝料を請求するということが考えられます。

しかし,不貞行為をした第三者に対し離婚慰謝料を請求することについて,平成31年2月19日に最高裁判所の判決がでました。
この判決では,夫婦の一方は他方と不貞行為に及んだ第三者に対し,特段の事情がない限り,離婚に伴う慰謝料請求はできないとされました。離婚は本来,夫婦間で決めるべき事柄であることから,不貞行為により婚姻関係が破綻して離婚に至ったとしても,直ちに,第三者が離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うものではなく,責任を負うのは,単に不貞行為をしただけではなく,離婚させることを意図して,婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして離婚をやむをえなくしたと評価すべき特段の事情がある場合に限られるとのことです。

この判決は,第三者に対する離婚慰謝料の請求は原則としてできないというものであって,第三者に対する不貞慰謝料の請求を否定するものではありません。そのため,今後,第三者に対しては離婚慰謝料ではなく,不貞慰謝料の請求をすることが基本になるでしょうが,消滅時効の期間の点で第三者に慰謝料請求ができなくなるケースもでてきます。

なお,不貞行為をした夫婦の一方と第三者の責任は共同不法行為責任であり,不真正連帯債務であると考えられていますが,夫婦の一方に離婚慰謝料を請求し,第三者に不貞慰謝料を請求した場合,共同不法行為責任・不真正連帯債務や求償についてどのように考えるのか問題となるものと思われます。
また,第三者に対し不貞慰謝料の請求はできるけれども,離婚慰謝料の請求はできないとした場合,慰謝料額にどのような影響を与えるのかも問題となるものと思われます。

 

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