【親子問題】非嫡出子と認知

2015-06-09

一 非嫡出子

非嫡出子とは,婚姻関係にない男女の間に生まれた子をいいます。

子の出生によって,非嫡出子と父親の間に,法律上の親子関係が当然に発生するわけではなく,認知により,親子関係が生じます。

また,準正により,嫡出子となります。

 

二 認知

1 認知とは

子の出生によって,非嫡出子と父親の間に,法律上の親子関係が当然に発生するわけではなく,認知により,親子関係が生じます。

この点,民法779条は,「嫡出でない子は,その父又は母がこれを認知することができる。」と規定しておりますが,母とその非嫡出子との親子関係は,原則として母の認知をまたず,分娩の事実によって当然発生しますので,認知が問題となるのは,父親と子の間です。

 

2 任意認知

(1)任意認知とは

任意認知とは,父が自由意思により自分の子であることを承認することです。

(2)認知能力

認知をするには,父が未成年者または成年非後見人であっても,法定代理人を要しません(民法780条)。

(3)認知の方式

認知は,戸籍法の定めるところにより届け出ることによって行います(民法781条1項)。

また,認知は遺言によってもできます(民法781条2項)

(4)承諾を要する場合

①成年の子の認知

成年の子は,その承諾がなければ,認知できません(民法782条)。

②胎児の認知

父は胎児の認知をすることができますが,母の承諾を得なければなりません(民法783条1項)。

③死亡した子の認知

死亡した子でも,直系卑属がいる場合には認知ができますが,直系卑属が成年の場合には承諾を得なければなりません(民法783条2項)。

 

3 強制認知

(1)強制認知とは

強制認知とは,強制的に父子関係を認めさせることをいいます。

(2)認知を求める調停

調停前置主義が適用されるため,訴訟をする前に,子,その直系卑属またはこれらの者の法定代理人(民法787条本文)は,まず家庭裁判所に認知を求める調停を申し立てなければなりません(家事事件手続法257条1項)。

調停で当事者間で合意が成立すれば,家庭裁判所は合意に相当する審判をすることができ(家事事件手続法277条1項),認知の効力が生じます。

(3)認知の訴え

子,その直系卑属またはこれらの者の法定代理人は,家庭裁判所に認知の訴えを提起することができます(民法787条本文,人事訴訟法2条2号)。

認知の訴えは,父が死亡した後でも提起することができますが,父の死亡の日から3年以内に提起しなければなりません(民法787条但書)。

認知の訴えの被告は父ですが,父が死亡している場合には検察官が被告となります(人事訴訟法12条3項)。

 

4 認知の効果

(1)親子関係の発生(遡及効)

認知により,親子関係が生じます。

認知の効力は子の出生の時にさかのぼって生じます(民法784条本文)。

ただし,第三者が既に取得した権利を害することはできません(民法784条但書)。

(2)親子関係が発生することによって生じる効果

父の認知前は,非嫡出子は母の氏を称し(民法790条2項),母が親権者となりますが,認知後は,子は父の氏を称することができますし(民法791条1項),父が親権者となることもできます(民法819条4項)。

また,父が認知することにより,父は子を扶養する義務を負いますし,父の相続人となることができます。

なお,以前は,非嫡出子の法定相続分は嫡出子の法定相続分の2分の1とすると規定されていましたが(民法900条1項4号但書),違憲判決がでたことにより,その規定は削除されたため,現在では,非嫡出子の法定相続分と嫡出子の法定相続分は同じです。

 

5 認知の無効

民法786条は「子その他の利害関係人は,認知に対して反対の事実を主張することができる。」と規定しており,生物学上の親子関係がない場合や父の意思に基づかない届け出がなされた場合には,認知の無効の訴えをすることができます(人事訴訟法2条2号)。

なお,調停前置主義が適用されるため,訴訟をする前に,まず家庭裁判所に認知の無効を求める調停を申し立てなければなりません(家事事件手続法257条1項)。調停で当事者間で合意が成立すれば,家庭裁判所は合意に相当する審判をすることができ(家事事件手続法277条1項),認知無効の効力が生じます。

 

6 認知の取消し

人事訴訟法2条2号は,認知の取消しの訴えを人事訴訟の一つとしております(なお,調停前置主義が適用されるため,訴訟をする前に,まず家庭裁判所に認知の取消しを求める調停を申し立てなければなりません(家事事件手続法257条1項)。)。

取消事由については,条文上規定されていないため,様々な見解がありますが,認知に承諾を要する場合に(民法782条,民法783条)承諾を欠いたときは取り消すことができると解されています(ただし,無効原因になるとする見解もあります。)。

また,認知が詐欺または強迫による場合については,取消事由にあたるとする見解もありますが,民法785条が「認知をした父又は母は,その認知を取り消すことができない。」と規定しているため,認知無効の訴えによるべきであるとする見解が通説です。

 

三 準正

1  準正とは

準正とは,非嫡出子が父母の婚姻により嫡出子の身分を取得することです。

認知後,婚姻した場合(婚姻準正)と,婚姻後,認知した場合(認知準正)があります。

2 認知準正

父が認知した子は,父母の婚姻によって,嫡出子の身分を取得します(民法789条1項)。

3 認知準正

婚姻中父母が認知した子は,その認知の時から,嫡出子の身分を取得します(民法789条2項)。

条文上,「認知の時から」と規定されておりますが,効果は婚姻時にさかのぼるとする見解が通説です。

4 子が死亡していた場合

婚姻準正,認知準正の規定は,子が死亡していた場合にも準用されます(民法789条3項)。

 

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