【親子問題】父を定めることを目的とする訴え・調停

2018-06-18

母が再婚後に子を産んだ場合,嫡出の推定が重複し,前婚の夫と後婚の夫のいずれもその子の父と推定されることがあります。
そのような場合にどちらが父であるか定める手続として,父を定めることを目的とする訴えや調停があります。

 

一 父を定めることを目的とする訴え

1 父を定めることを目的とする訴えとは

父を定めることを目的とする訴えとは,民法733条1項の規定(再婚禁止期間の規定)に違反して再婚した女性が出産したため,民法772条の規定により嫡出の推定を重複して受ける子について,父を定めることを求める訴えです(民法773条)。

婚姻成立の日から200日を経過した後または婚姻の解消・取消しの日から300日以内に生まれた子は,妻が婚姻中に懐胎したものと推定され,夫の子と推定されます(民法772条)。
妻が再婚した場合,再婚禁止期間(民法733条)があるため,前婚の夫と後婚の夫とで嫡出の推定が重複することは基本的にありませんが,婚姻届が誤って受理される等して嫡出の推定が重複することがあります。
そのような場合に,前婚の夫と後婚の夫のどちらが子の父であるか定めるため,家庭裁判所に父を定めることを目的とする訴えを提起することができます。

 

2 当事者

(1)原告

子,母,母の配偶者または母の前配偶者が原告となります(人事訴訟法43条1項)。

(2)被告

①子または母が原告の場合,母の配偶者と母の前配偶者が共同被告(一方が死亡した後は他方のみが被告)となります(人事訴訟法43条2項1号)。
②母の配偶者が原告の場合,母の前配偶者が被告となります(人事訴訟法43条2項2号)。
③母の前配偶者が原告の場合,母の配偶者が被告となります(人事訴訟法43条2項3号)。

なお,被告となる人が死亡した時は検察官が被告となります(人事訴訟法43条2項)。

 

二 父を定めることを目的とする調停

1 調停前置主義

人事訴訟事件については調停前置主義が採用されているため(家事事件手続法257条1項),父を定めることを目的とする訴えを提起する前に調停を申し立てなければなりません。

 

2 合意に相当する審判

父を定めることを目的とする調停事件については,公益性が強く,当事者の意思だけで解決することはできませんが,当事者に争いがない場合には,簡易な手続で処理することが望ましいといえます。
そのため,まず調停手続を行い,当事者間に申立ての趣旨のとおりの審判を受けることについて合意が成立し,原因事実について争いがない場合には,家庭裁判所は,事実の調査をした上,合意が正当と認めるときに,合意に相当する審判をします(家事事件手続法277条1項)。
調停不成立の場合や,合意に相当する審判による解決ができなかった場合には,父を定めることを目的とする訴えを提起して,解決を図ることができます。

 

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