【親子問題】普通養子縁組

2015-06-15

一 普通養子縁組とは

養子縁組とは,親子としての血のつながりのない者の間で嫡出子と同一の法律関係を発生させる法律行為です。

養子縁組には,普通養子縁組と特別養子縁組があります。

普通養子縁組とは,特別養子縁組以外の一般の養子縁組のことです。

 

二 普通養子縁組の要件

1 縁組の意思の合致

養子縁組をするには,養親となる者と養子となる者との間の縁組意思の合致が必要です。

縁組の意思とは,養子縁組の法的効果を享受する意思のことです。

扶養や相続を目的とする養子縁組も認められています。

2 届出

養子縁組は,戸籍法の定めるところにより届け出ることによって,効力を生じます(民法799条で準用する民法739条1項)。

また,届出は,当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面またはこれらの者からの口頭でしなければなりません(民法799条で準用する民法739条2項)。

縁組の意思は,届出の時点で存在することが必要であり,届出の時点で縁組の意思を欠くと養子縁組は無効となります。

3 その他の要件

(1)養親の年齢

養親は成年者でなければなりません(民法792条)。

(2)尊属または年長者を養子とすることの禁止

尊属または年長者を養子とすることはできません(民法793条)。

(3)後見人が被後見人を養子とする縁組

後見人が被後見人を養子とする場合には家庭裁判所の許可を得なければなりません(民法794条)。

(4)配偶者のある者が未成年者を養子とする縁組

配偶者のある者が未成年者を養子とする場合には,配偶者とともに養子縁組しなければなりません(民法795条本文)。

ただし,配偶者の嫡出子を養子とする場合,配偶者が意思表示ができない場合を除きます(民法795条但書)。

(5)配偶者のある者の縁組

配偶者のある者が縁組をする場合には,配偶者の同意を得なければなりません(民法796条本文)。

ただし,配偶者とともに縁組をする場合,配偶者が意思を表示することができない場合は不要です(民法796条但書)。

(6)15歳未満の者を養子とする縁組

養子となる者が15歳未満であるときは,法定代理人が代わって縁組の承諾をすることができますが(民法797条1項。「代諾養子縁組」といいます。),養子となる者の父母で監護すべきものがあるとき,または養子となる者の父母で親権を停止されているものがあるときは,その同意を得なければなりません(民法797条2項)。

(7)未成年者を養子とする縁組

未成年者を養子とする場合には,家庭裁判所の許可を得なければなりません(民法798条本文)。

ただし,自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は不要です(民法798条但書)。

三 普通養子縁組の効果

1 嫡出子の身分の取得

養子は,縁組の日から,養親の嫡出子の身分を取得します(民法809条)。

2 縁組による親族関係の発生

養子と養親及びその血族との間には,養子縁組の日から,血族間におけるのと同一の親族関係を生じます(民法727条)。

なお,養子縁組前の養子の子(連れ子)と養親との間には親族関係は生じません。

3 実親との関係

普通養子縁組の場合,実親との親子関係は存続します。

そのため,養子は,養親の相続人となるのみならず,実親の相続人にもなります。

4 養子の氏

養子は,養親の氏を称します(民法810条本文)。

ただし,婚姻により氏を改めた者が,婚姻の際に定めた氏を称すべき間は除きます(民法810条但書)。

 

四 養子縁組の無効

1 無効原因

当事者間に縁組をする意思がないときや,当事者が縁組の届出をしないときは,養子縁組は無効となります(民法802条)。

なお,夫婦共同養子縁組の場合で,夫婦の一方に縁組をする意思がなかったときは,他方の養子縁組も原則として無効となります。

2 手続

無効な養子縁組は,訴訟や審判を経なくても当然に無効であると解されております。

養子縁組の無効を確認する法的手続としては,①養子縁組の無効を求める調停,②養子縁組の無効の訴えがあります。

 

五 養子縁組の取消し

1 取消事由

民法803条は,「縁組は,次条から第808条までの規定によらなければ,取り消すことができない。」と規定しており,

①養親が未成年者である場合(民法804条)←民法792条違反

②養子が尊属または年長者である場合(民法805条)←民法793条違反

③後見人と被後見人との間の無許可縁組(民法806条)←民法794条違反

④配偶者の同意がなく縁組した場合←民法796条違反

同意が詐欺・強迫による場合(民法806条の2)

⑤子の監護をすべき者の同意がなく縁組した場合←民法797条2項違反

同意が詐欺・強迫による場合(民法806条の3)

⑥養子が未成年者である場合の無許可縁組(民法807条)←民法798条違反

⑦養子縁組が詐欺または強迫によりなされた場合(民法808条)

には,取消権者は,家庭裁判所に養子縁組の取消しを請求することができます。

 

2 手続

養子縁組を取り消すには,家庭裁判所に養子縁組の取消しを請求しなければなりません。

養子縁組を取消す法的手続としては,①養子縁組の取消しを求める調停,②養子縁組の取消しの訴えがあります。

 

六 離縁

離縁とは,養子縁組を解消させることです。

離縁の手続や離縁の効果については,別に説明します。

 

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