【相続・遺言】養子縁組と相続

2017-12-16

養子がいる場合,相続手続はどうなるでしょうか。

 

一 養子縁組

養子縁組とは,親子としての血のつながりのない者の間で嫡出子と同一の法律関係を発生させる法律行為です。
養子縁組には,普通養子縁組と特別養子縁組があります。特別養子縁組は,子の利益を図るための養子縁組であり,実親やその血族との親族関係が終了する養子縁組です。普通養子縁組は,特別養子縁組以外の一般の養子縁組のことです。
養子縁組により,養子は養親の嫡出子の身分を取得しますし(民法809条),養子と養親及びその血族との間には,血族間におけるのと同一の親族関係を生じますので(民法727条),相続目的で養子縁組が行われることがあります。
民法上,養子の人数について制限はありませんが,相続税の場合では,養子縁組を利用することで不当に税額を低くすることができないようにするため,基礎控除額の計算で養子の人数を制限する等されています。

 

二 養子縁組による相続への影響

1 養方の相続

養子縁組により,養子は養親の嫡出子の身分を取得しますし(民法809条),養子と養親及びその血族との間には,血族間におけるのと同一の親族関係を生じます(民法727条)。
被相続人の配偶者以外の親族は①子,②直系尊属,③兄弟姉妹の順で相続人となりますので(民法887条,889条),養子縁組をした場合,①養親の相続では,養子は被相続人の子として相続人になりますし,②養子が亡くなり,直系尊属が相続人となるときは,養親が相続人になりますし,③養親の他の子がなくなり,兄弟姉妹が相続人となるときは,養子は兄弟姉妹として相続人になります。

 

2 代襲相続

相続開始以前に相続人の子が死亡していた場合には,その子(被相続人の孫)が代襲相続人となりますので(民法887条2項),養親の親が被相続人となる相続において,相続開始前に養親が亡くなっていた場合には養子が代襲相続人となります。
また,養子の子が代襲相続人となれるかどうかについては,代襲相続人は被相続人の直系卑属でなければなりませんので(民法887条2項但書),養子縁組前に生まれた養子の子(養子の連れ子)は代襲相続人にはなれませんが,養子縁組後に生まれた養子の子は代襲相続人になれます。

 

3 実方の相続

(1)普通養子縁組の場合

普通養子縁組の場合は,養子と実方の父母やその血族との親族関係がなくなるわけではありませんので,養子と実方親族との間で相続関係が生じることがあります。

 

(2)特別養子縁組の場合

特別養子縁組の場合には,養子と実方の父母やその血族との親族関係は終了しますので(民法817条の9本文),養子と実方親族の間で相続関係は生じません。

 

三 相続人の資格の重複

養子縁組をした場合には,相続人の資格が重複することがあります。
相続人の資格が重複する場合,双方の相続分を取得することができるのか問題となりますが,相続人の資格が重複するパターンは様々あり,それぞれのパターンで見解が分かれています。

 

1 養子にした孫が代襲相続人となった場合

被相続人が孫を養子とした後,被相続人より先に養子の実親である被相続人の子が亡くなった場合,孫には養子としての相続人の資格と代襲相続人としての資格が重複することになります。
その場合に養子(孫)が双方の相続分を取得するかについては,肯定する見解と否定する見解がありますが,登記先例では,双方の相続分を取得すると解されております。

例えば,長男,長女がいる被相続人が長男の子(孫)を養子とした場合,長男が生きているうちに相続が開始すれば,長男,長女,養子(孫)の相続分は3分の1ずつとなりますが,被相続人より先に長男が亡くなったときには,孫は,養子としての相続分3分の1と,代襲相続人としての相続分3分の1を取得することになります。

 

2 養子が養親の実子と婚姻した場合

養子が養親の実子と婚姻した後,その実子が亡くなり,兄弟姉妹が相続人となる場合,養子には,配偶者としての相続人の資格と兄弟姉妹としての相続人の資格が重複することになります。
その場合に養子が双方の相続分を取得するかについては,肯定する見解と否定する見解がありますが,登記先例では,配偶者としての相続分の取得のみが認められ,兄弟姉妹としての相続分の資格は認められておりません。

 

3 婚外子を養子とした場合

被相続人が婚外子を養子とした場合,養子縁組により婚外子が嫡出子になったものであり(民法809条),相続人の資格が重複するわけではありません。

 

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