【相続・遺言】遺贈

2015-09-28

遺言により,被相続人は自らの意思で誰に財産を承継させるか決めることができます。

そのために,民法は,①相続分の指定(民法902条),②遺産分割方法の指定(民法908条),③遺贈(民法964条)について規定しています。

ここでは,遺贈について簡単に説明させていただきます。

 

一 遺贈とは

遺贈とは,遺言によって,遺産の全部または一部を,他者に無償で与えることをいいます(ただし,負担付遺贈もできます。)。

遺贈には,包括遺贈(財産の全部または一定割合を遺贈すること)と特定遺贈(特定の財産を遺贈すること)があります(民法964条本文)。

遺贈は,遺言者の遺言による意思表示により効果が生じる単独行為であり,原則として遺言者が死亡したときに効力が生じます(民法985条1項 条件付遺贈,期限付遺贈もできます。)。

遺贈は,遺留分に関する規定に違反することはできませんので(民法964条但書),遺贈が相続人の遺留分を侵害する場合には,受遺者は遺留分権者から遺留分減殺請求を受けます。

 

二 受遺者

遺贈を受ける人のことを受遺者といいます。

相続人だけでなく,相続人以外の人も受遺者となれます。

また,自然人だけでなく,法人も受遺者となれますし,胎児も受遺者となれます(民法965条,886条)。

もっとも,相続欠格事由がある者は受遺者となることはできません(民法965条,891条)。

また,遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは遺言の効力はなくなり(民法994条1項),受遺者が受け取るべきであった財産は,原則として相続人に帰属します(民法995条)。代襲はありませんので,代襲させたい場合には,受遺者が先に死亡したときには,その子に遺贈させる旨の予備的遺言をすることになります。

 

三   遺贈義務者

遺贈を実行する義務を負う者のことを遺贈義務者といいます。

遺贈義務者は,通常,相続人ですが,遺言執行者がいるときは遺言執行者が相続人の代理人として,遺贈を実行します。

例えば,不動産の登記をする場合には,相続人または遺言執行者が受遺者と共同で申請します。

 

四 特定遺贈

1 特定遺贈とは

「○○に○○の土地を遺贈する。」,「○○に○○の預貯金を遺贈する。」というように,特定の財産を遺贈することを特定遺贈といいます。

遺言が効力を生ずることにより,遺贈された財産について,受遺者に権利が移転します。

2 遺贈の放棄

受遺者は,遺言者の死亡後,いつでも遺贈の放棄をすることができます(民法986条1項)。遺贈を放棄した場合,受遺者が受け取るべきであった財産は原則として相続人に帰属します(民法995条)。

 

五 包括遺贈

1 包括遺贈とは

遺産の全部または一定割合を遺贈することを包括遺贈といいます。

「○○に全財産を遺贈する。」というように全部を遺贈する場合(全部包括遺贈または単独包括遺贈)や「○○に全財産の○分の○を遺贈する。」というように一定割合を遺贈する場合(一部包括遺贈または割合的包括遺贈)があります。

2 包括遺贈の特徴

包括受遺者は,相続人と同一の権利義務を有するため(民法990条),遺言の効力発生時に,遺言者の一身専属権を除き,一切の権利義務を承継します。

一部包括遺贈の場合には,受遺者は他の相続人と遺産を共有する状態になりますので,受遺者と相続人との間で遺産分割を行うことになります。

また,包括遺贈には,遺贈の承認・放棄についての民法986条,987条の規定の適用はなく,相続の承認,相続放棄の規定が適用されます。

もっとも,包括受遺者は相続人と全く同じというわけではなく,受遺者には遺留分がない,代襲相続の規定の適用がない等,相続とは違いがあります。

 

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