【相続・遺言】被相続人の療養看護と寄与分・特別寄与料

2022-06-06

相続人が被相続人の介護等の療養看護をしていた場合、その相続人には寄与分が認められることがあります。

また、相続人の配偶者等相続人以外の被相続人の親族が被相続人の療養看護をしていた場合には、その親族には特別寄与料が認められることがあります。

 

一 療養看護と寄与分

1 寄与分の制度

共同相続人の中に、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした相続人がいる場合は、その相続人の相続分を算定する際に寄与分が加算されます(民法904条の2)。

 

寄与分は共同相続人間の公平を図る制度です。

 

2 どのような場合に寄与分が認められるか

相続人が被相続人の介護等の療養看護をしていた場合、その療養看護が「被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与」にあたるときは、療養看護をした相続人に寄与分が認められます(民法904条の2第1項)。

 

(1)特別の寄与

特別の寄与といえるには、被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を超えることが必要です。

被相続人に療養看護の必要性がある場合(要介護度が2以上が目安となります。)に無償(又は無償に近い状況)で、相当な期間継続して、専従して被相続人の療養看護を行っていたことが必要となります。

療養看護の必要性がなかった場合、相当な対価を得ていた場合、ごく短期間の場合、片手間で行っていた場合には、特別の寄与とはいえません。

 

(2)被相続人の財産の維持又は増加

療養看護により被相続人の財産が維持又は増加したことが必要となりますから、療養看護により看護費用の支出を免れたことが必要となります。

療養看護により被相続人が精神的に楽になったというだけでは足りません。

 

3 寄与分額

寄与分額は、まずは当事者間の協議で定めます。協議が調わないとき又は協議ができないときは、家庭裁判所が、寄与者の請求により、寄与の時期、方法及び程度,相続財産の額その他一切の事情を考慮して定めます(民法904条の2第2項)。

 

寄与分は、被相続人が相続開始時に有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることはできません(民法904条の2第3項)。

 

 

療養看護の場合、寄与分額は、報酬額(日当)に療養看護した日数を乗じた金額に裁量割合を乗じて計算するのが一般的です。

 

寄与分額=報酬額×療養看護の日数×裁量割合

 

報酬額は、介護保険の介護報酬基準額によります。

 

療養看護の日数については、基本的に被相続人が要介護2以上の状態になっていた期間です。被相続人の入院期間や施設入所期間、介護サービスを受けていた期間は療養看護の日数から除かれます。

 

相続人による療養看護は職業人による療養看護ではないこと、親族として扶養義務があること等から、寄与分額を算定するにあたって裁量割合を乗じて減額されます。

 

二 療養看護と特別寄与料

1 特別寄与料の制度

相続法の改正(2019年7月1日施行)により、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務を提供して被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をした被相続人の親族は、相続開始後、相続人に対し寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払を請求することができるようになりました(民法1050条)。

 

なお、改正前は、相続人の配偶者等の親族が被相続人の療養看護を行っていた場合には、相続人の履行補助者による療養看護と評価して相続人の寄与分と認められることがありました。改正後もこのような扱いをすることはできると考えられています。

 

2 特別寄与料の要件

特別寄与料が請求できるのは、①被相続人の親族(相続人、相続放棄をした人、欠格・廃除により相続権を失った人は除かれます)が、②被相続人に対して無償で療養看護その他の労務を提供したことにより、③被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした場合です(民法1050条1項)。

 

3 特別寄与料の額

特別寄与者は寄与に応じた額の金銭の支払を請求することができます(民法1050条1項)。

特別寄与料の支払については、まずは当事者間の協議で定めます。協議が調わないとき又は協議ができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができ(民法1050条2項)、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して特別寄与料の額を定めます(民法1050条3項)。

 

特別寄与料の額は、被相続人が相続開始時に有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることはできません(民法1050条4項)。

 

相続人が複数いる場合には、各相続人は、特別寄与料の額に法定相続分又は指定相続分を乗じた額を負担します(民法1050条4項)。

 

具体的な特別寄与料の金額の算定については、寄与分の場合の算定方法が参考となります。

 

4 請求期間

特別寄与者が家庭裁判所に協議に代わる処分を請求することができるのは、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内または相続開始時から1年以内です(民法1050条2項但書)。

権利行使できる期間は短期間なので注意しましょう。

 

 

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