【相続・遺言】相続法の改正

2018-08-29

平成30年7月6日,民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号),法務局における遺言書の保管等に関する法律が成立し(平成30年7月13日公布),相続法が改正されました。
改正された点は以下のとおりです。
なお,①自筆証書遺言の方式緩和については,公布の日から6か月を経過した日(平成31年1月13日),②配偶者の居住権の保護,自筆証書遺言の保管制度については,公布の日から2年を超えない範囲で政令が定める日,③それ以外については,公布の日から1年を超えない範囲で政令が定める日から施行されます。

 

一 配偶者の居住権保護

1 配偶者短期居住権

被相続人の配偶者が相続開始時に被相続人の建物に無償で住んでいた場合には,一定期間,無償で建物に居住する権利が認められます。

 

2 配偶者居住権

被相続人の配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物について,遺産分割や遺贈により,終身または一定期間,配偶者に居住権を取得させることができるようになります。

 

二 遺産分割等の改正

1 配偶者保護のため,持戻し免除の意思表示の推定

婚姻期間が20年以上の配偶者に居住用不動産を遺贈又は生前贈与した場合には,特別受益の持戻し免除の意思表示が推定されます。
持戻しが免除されることにより,配偶者が遺産分割で取得できる財産が増えることになります。

 

2 預貯金の仮払制度

遺産である預貯金について,生活費や葬儀費用の支払等のため,遺産分割前に払戻しを受けられる制度が創設されます。
また,預貯金について家庭裁判所の仮分割の仮処分の要件も緩和されます。

 

3 共同相続人の一部が遺産分割前に遺産を処分した場合

共同相続人の一部が遺産分割前に遺産を処分した場合(例えば,相続開始後に共同相続人の一人が無断で遺産である預金を引き出した場合),これまでは不法行為や不当利得の問題として,処分者を含む共同相続人全員の合意がなければ,民事訴訟で解決しなければなりませんでしたが,改正により処分者以外の共同相続人の同意があれば,処分者の同意がなくても,計算上,処分された財産を遺産に戻して,遺産分割をすることができるようになります。

 

三 遺言制度の改正

1 自筆証書遺言の方式緩和

改正前は自筆証書遺言は遺言者が全文を自書しなければなりませんが,改正後は相続財産の目録について自書する必要がなくなり,パソコン等で作成した目録を添付して,自筆証書遺言を作成することができるようになります。

 

2 遺言執行者の権限明確化

改正により,遺言執行者の権限が明確化されました。

 

3 法務局における自筆証書遺言の保管

自筆証書遺言を法務局に保管してもらうことができるようになります。
相続開始後,相続人等は遺言書の写し(遺言書情報証明書)の交付請求や遺言書原本の閲覧請求ができます。交付や閲覧されたときは,他の相続人等に遺言書が保管されている旨通知されます。
また,遺言書が保管されている場合には,検認が不要となります。

 

四 遺留分制度の改正

改正前は遺留分減殺請求権の行使により物権的効果が生じるものと解されてきましたが,改正後は,遺留分侵害額に相当する金銭債権が生じることになります。
例えば,改正前は,遺留分減殺請求権の行使により遺産である不動産は,遺留分侵害者
と遺留分権者の共有となり,遺留分侵害者が価額弁償しない限りは,共有関係の解消は共有物分割の問題となります。
これに対して,改正後は,遺留分権者は金銭債権を取得することになりますので,不動産について共有にはなりません。

また,裁判所は,受遺者等の請求により,金銭の支払いについて相当の期限を許与することができます。

 

五 相続の効力等の改正

法定相続分を超える権利の承継については,登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができなくなります。

 

六 相続人以外の者の貢献を考慮

相続人以外の被相続人の親族が,無償で被相続人の療養監護等を行い,被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした場合には,相続開始後,相続人に対し金銭の支払いを請求することができるようになります。

 

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