【相続・遺言】相続分の譲渡

2015-12-22

一 相続分の譲渡とは

相続分の譲渡とは,相続人が,被相続人の死亡によって承継した権利・義務を,他者に譲渡する契約のことです。

相続分の全部を譲渡することも,相続分の一部を譲渡することもできます。

また,無償で譲渡することも,有償で譲渡することもできます。

譲渡する相手方は,相続人でも,相続人以外の第三者でもかまいません。

相続分の譲渡が行われることにより,譲渡人が譲渡した相続分は譲受人に移転し,その分,譲渡人の相続分はなくなります。

積極財産のみならず消極財産も譲受人に承継されますが,債権者が害されないよう債権者との関係では,譲渡人が債務を負うものと解されております。

 

二 相続分譲渡の方法

相続分を譲渡するにあたっては,譲渡人,譲受人の間で,相続分譲渡証書を作成するのが一般的です。

また,相続分譲渡証書には,印鑑登録証明書を添付します。

 

三 相続分の譲渡人の地位

相続分の譲渡人は,原則として,遺産分割の当事者となる資格を失います。

遺産分割調停や遺産分割審判の申立前に相続分の譲渡が判明している場合には,譲渡人を当事者から外して申し立てることができますし,申立後に譲渡が判明した場合や申立後に相続分の譲渡が行われた場合には,家庭裁判所は,排除の決定をすることができます(家事事件手続法43条1項,258条1項)。

 

四 相続分の譲受人の地位

相続分の譲受人は相続分を有しますので,遺産分割の当事者となります。

遺産分割調停や遺産分割審判の申立前に相続分の譲渡が判明している場合には,譲受人を当事者に加えて申し立てることになりますし,申立後に譲渡が判明した場合や申立後に相続分の譲渡が行われた場合には,譲受人は手続に参加することができます(家事事件手続法41条1項,258条1項)。家庭裁判所は当事者の申立てまたは職権で,譲受人を手続に参加させることができます(家事事件手続法41条2項,258条1項)。

五 相続分の取戻権

相続人以外の第三者に対して相続分が譲渡された場合には,遺産分割に相続人でない者が加わることになりますが,他の共同相続人からすれば,相続人以外の者が遺産分割に加わることを望ましく思わないことがあります。そのような場合には,他の共同相続人は,他の相続人は,相続分の取戻権を行使することができます。

共同相続人の一人が遺産分割前に相続分を第三者に譲渡したときは,他の共同相続人は,価額,費用を償還して,相続分を譲り受けることができます(民法905条1項)。

取戻権は,1か月以内に行使しなければなりません(民法905条2項)。

 

ページの上部へ戻る

Copyright(c) 2016 ながせ法律事務所 All Rights Reserved.