【相続・遺言】相続人の不存在

2015-11-12

相続人がいない人が亡くなった場合,その人の財産はどうなるのでしょうか。

一 相続人の不存在

相続人がいない場合には,相続財産の帰属主体がいないことになります。

そのため,相続開始時に,相続人の存在が明らかでないときには,相続財産自体を法人と擬制した上で(民法951条),相続財産管理人が選任され(民法952条),相続財産を管理しつつ,相続人を捜し,相続人が見つからなかった場合には,相続財産を清算します。

他方,相続人がいることが明らかになったときは,相続財産法人は成立しなかったものとみなされますが,相続財産管理人が権限内でした行為の効力は妨げられません(民法955条)。

 

二 手続の流れ

1 相続開始時

相続開始時に,「相続人のあることが明らかでないとき」は相続財産法人が成立します(民法951条)。

なお,相続人がいない場合であっても,相続財産の全部について包括受遺者が存在する場合には,包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有することから(民法990条),「相続人のあることが明らかでないとき」にはあたらず,相続財産法人は成立しないと解されております。

2 相続財産管理人の選任・公告

(1)相続財産管理人の選任請求

相続財産法人が成立した場合,家庭裁判所は,利害関係人または検察官の請求によって,相続財産管理人を選任します(民法952条1項)。

利害関係人には,相続債権者や受遺者,特別縁故者等があたります。

(2)相続財産管理人選任の公告

相続財産管理人が選任されたときは,家庭裁判所は,遅滞なく公告し(民法952条2項),相続人が現れるのを待ちます。

3 相続債権者・受遺者に対する公告・弁済

(1)相続債権者・受遺者に対する公告

相続財産管理人選任の公告後,2か月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは,相続財産管理人は,遅滞なく,すべての相続債権者及び受遺者に対し,一定期間内(2か月以上)に請求の申出をすべき旨を公告します(民法957条1項)。

(2)相続債権者・受遺者に対する弁済

期間満了後,相続財産管理人は,まず債権者に弁済し,次いで受遺者に弁済します(民法957条2項,民法929条,民法931条)。

4 相続人捜索の公告

相続債権者・受遺者に対する公告の期間満了後,なお相続人のあることが明らかでないときには,家庭裁判所は,相続財産管理人または検察官の請求により,相続人があるならば,一定期間内(6か月以上)に権利を主張すべき旨を公告します(民法958条)。

期間内に相続人としての権利を主張する者がなかったときには,相続人,相続財産管理人に知られなかった相続債権者や受遺者は,権利行使ができなくなります(民法958条の2)。

5 特別縁故者に対する相続財産の分与(民法958条の3)

相続人捜索の公告で定めた期間満了後,3か月以内に,被相続人と生計を同じくしていた者,被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者(特別縁故者)の請求があった場合,家庭裁判所は,相当と認めるときには,特別縁故者に,清算後残存すべき相続財産の全部または一部を与えることができます(民法958条の3)。

6 国庫帰属

特別縁故者への財産分与によって処分されなかった相続財産は国庫に帰属します(民法959条)。

国庫に帰属する時期は,相続財産管理人が国庫に引き継いだときであると解されております。

 

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