【相続・遺言】生命保険と相続

2016-04-04

被相続人が生命保険契約を締結していた場合,相続財産として遺産分割を行う必要はあるのか問題となります。

生命保険契約とは,被保険者の生死を保険事故とし,保険事故が発生した場合に,保険者(生命保険会社等)が,保険金受取人に保険金を支払うことを約し,保険契約者が保険者に保険料を支払うことを約す契約であり,まずは,保険契約者,被保険者,保険金受取人が,それぞれ誰であるかを確認することが必要となります。

なお,生命保険については,民法と相続税法では扱いが異なりますが,以下は,民法を念頭に説明します。

 

一 保険契約者と被保険者が被相続人である場合

被保険者である被相続人が亡くなった場合には,保険金受取人に死亡保険金が支払われます。

 

1 保険金受取人が被相続人以外の者の場合

(1)保険金受取人として特定の相続人が指定されていた場合

被保険者である被相続人が亡くなったことで,保険金請求権が生じますが,保険金請求権は,受取人の固有の権利ですので,相続財産ではなく,遺産分割の対象とはなりません。

そのため,相続人は,相続放棄をしても,死亡保険金を受け取ることができます。

また,特定の相続人が生命保険金を受け取った場合,生命保険金が特別受益にあたるかという問題がありますが,原則として,民法903条の特別受益にあたらないと解されております。ただし,相続人間の不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認できないほどに著しいと評価すべき特段の事情がある場合には特別受益に準ずるものとして,民法903条の類推適用により持戻しの対象となることがあると解されております。

 

(2)保険金受取人が「相続人」と指定されていた場合

相続人が固有の権利として生命保険金を受け取るため,保険金は,相続財産ではなく,遺産分割の対象とはなりません。

相続人が複数いる場合,民法427条により各相続人は等しい割合で保険金を取得することになるのか(相続人が3人いる場合には3分の1ずつ),法定相続分により保険金を取得することになるのか(相続人が配偶者と子2人の場合,配偶者は2分の1,子は4分の1ずつ)問題となりますが,特段の事情がない限り,民法427条の「別段の意思表示」があるものとして,各相続人は法定相続分の割合で保険金を受け取るものと解されております。

 

(3)保険金受取人の指定がなく,約款に基づいて相続人が受け取る場合

保険金受取人が相続人と指定されている場合と同じく,相続人は固有の権利として生命保険金を受け取るため,保険金は相続財産ではなく,遺産分割の対象とはなりません。

 

2 保険金受取人が被相続人の場合

被相続人が受取人となっている場合には,保険金は被相続人の財産ですので,相続財産であり,遺産分割の対象となると考えられます。

ただし,被相続人の意思を合理的に解釈し,相続人の固有の権利とする考えもあります。

 

二 保険契約者は被相続人であるが,被保険者が被相続人以外の者の場合

被保険者が被相続人以外の者である保険契約は,被相続人が亡くなっても保険金が支払われるわけではありませんが,財産的価値がありますので,保険契約に関する権利は相続財産であり,遺産分割の対象となります。

 

 

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