【相続・遺言】包括遺贈

2015-10-05

一 包括遺贈

遺贈とは,遺言によって,遺産の全部または一部を,他者に無償で与えることをいいます。

遺贈には,特定遺贈(特定の財産を遺贈すること)と包括遺贈(遺贈の目的となる財産を特定せず,遺産の全部または一定割合を遺贈すること)があります。

また,包括遺贈には,「○○に全財産を遺贈する。」というように全部を遺贈する場合(全部包括遺贈または単独包括遺贈)と「○○に全財産の○分の○を遺贈する。」というように一定割合を遺贈する場合(一部包括遺贈または割合的包括遺贈)があります。

包括遺贈は,受遺者が相続人と同一の権利義務を有するため(民法990条),特定遺贈とは効力が異なります。

そのため,遺贈が,特定遺贈と包括遺贈のどちらにあたるのか区別する必要があります。

 

二 包括遺贈の特徴(特定遺贈との違い)

1 相続人と同一の権利義務を有します。

包括受遺者は,相続人と同一の権利義務を有します(民法990条)。

そのため,包括受遺者は,遺言の効力発生時に,遺言者の一身専属権を除き,一切の権利義務を承継します。

特定遺贈では,受遺者は,被相続人の債務を承継することはありませんが,包括遺贈では,受遺者は被相続人の債務を承継します。

2 遺産分割

一部包括遺贈の場合には,受遺者は他の相続人と遺産を共有する状態になりますので,受遺者と相続人との間で遺産分割を行うことになります。

3 遺贈の承認,放棄

遺贈の承認・放棄についての民法986条,987条の規定の適用はなく,相続の承認,相続放棄の規定が適用されます。

そのため,特定遺贈の場合には,遺言者の死亡後,いつでも放棄することができますが(民法986条1項),包括遺贈の場合には,原則として相続開始を知ったときから3か月以内に放棄しなければなりません(民法915条1項)。

また,包括遺贈の場合には,単純承認のほか,限定承認をすることもできます。

 

三 包括遺贈と相続の違い

受遺者は,相続人と同一の権利義務を有しますが,相続人と全く同じというわけではありません。

以下のような違いがあります。

1 受遺者となることができる者

相続人は自然人に限られますが,包括受遺者は自然人に限られず,法人も包括受遺者となることができます。

2 遺留分の有無

受遺者には遺留分がありません。

そのため,特定遺贈により包括受遺者の受遺分が侵害されても,包括受遺者は特定受遺者に対し遺留分減殺請求をすることはできません。

3 遺言者の死亡以前に受遺者が死亡した場合

遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは遺言の効力はなくなります(民法994条1項)。代襲相続の規定の適用はありません。

4 他の相続人が相続放棄した場合や他の包括受遺者が遺贈の放棄をした場合

相続人が相続放棄をした場合には,その人は初めから相続人でなかったものとみなされるので(民法939条),他の相続人の相続分が増えます。

また,包括受遺者が遺贈の放棄をした場合にも民法939条が適用されるので,相続人の相続分が増えます。

しかし,相続人が相続放棄をしたり,他の受遺者が遺贈を放棄したりしても,包括受遺者の持ち分は増えません。

5 登記

相続人は自分の法定相続分については,登記なくして第三者に対抗することができますが,包括受遺者は,包括遺贈を受けたことを登記しなければ,第三者に対抗することはできません。

また,相続人は,単独申請で登記をすることができますが,包括受遺者は,遺贈義務者(相続人または遺言執行者)と共同申請をしなければなりません。

 

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