【相続・遺言】代襲相続

2018-10-26

相続人となるべき被相続人の子や兄弟姉妹が相続開始前に亡くなった場合,その子が代襲相続人となります(民法887条2項,889条3項)。

 

一 代襲相続とは

相続人となるべき被相続人の子(または兄弟姉妹)が,相続開始以前に死亡等一定の原因により相続権を失ったときは,被相続人の孫以下の直系卑属(または兄弟姉妹の子)が相続人となることを代襲相続といいます。
代襲相続の制度は,相続人となるべき者の子の利益・期待の保護や生活保障,相続人間の公平を図ることを目的としています。

 

二 代襲原因

代襲相続の原因としては,①相続開始以前の死亡,②欠格,③廃除です(民法887条2項)。

相続放棄は,条文に規定されていないので,代襲原因とはなりません。
被相続人に多額の負債があり,相続人が相続放棄した場合,相続放棄した者の子は代襲相続人とはなりませんので,相続放棄の手続をする必要はありません。

 

三 代襲相続人

1 代襲相続人となることができる者

代襲相続人となることができるのは,①被相続人の子(民法887条2項),②被相続人の兄弟姉妹(民法889条2項)。

ただし,被相続人の子の子は被相続人の直系卑属でなければ代襲相続人になれません(民法887条2項但書)。養子の連れ子(養子縁組前に生まれた子)は,被相続人の直系卑属ではないので,代襲相続人になることはできません。

 

2 再代襲

被相続人の子に代襲原因があれば,その子(被相続人の孫)が代襲相続人となりますが,さらに孫に代襲原因がある場合には,その子(被相続人の曾孫)が代襲相続人となります(民法887条3項)。

兄弟姉妹についても再代襲相続があるかどうか問題となりますが,民法889条2項は民法887条2項を準用するものの,民法887条3項は準用していないので,再代襲はありません。

 

四 代襲相続人の法定相続分

代襲相続人の相続分は被代襲者の相続分と同じです(民法901条)。
被代襲者の代襲相続人が複数いる場合には,各代襲相続人の相続分は被代襲者の相続分を等分したものになります(民法901条,民法900条4号)。

例えば,被相続人に子A,Bがいて,Aが被相続人より先に亡くなり,Aの子C,Dが代襲相続した場合,被代襲者Aの法定相続分は2分の1ですので,代襲相続人C,Dの法定相続分は4分の1ずつとなります。

 

五 代襲相続人の特別受益

民法903条1項は「共同相続人中に,被相続人から,遺贈を受け,又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは,被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続人財産とみなし,前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。」と規定していて,これを特別受益の持戻しといいますが,代襲相続の場合はどうでしょうか。

 

1 被相続人が被代襲者に生前贈与した場合

代襲相続人は被代襲者が取得すべきだった相続分を取得することになりますので,被相続人が被代襲者に生前贈与した場合には,代襲相続人の特別受益となるのが原則であると解されます。

 

2 被相続人が代襲相続人に生前贈与した場合

代襲原因が発生した後に被相続人が代襲相続人に生前贈与した場合には,贈与の時点で代襲相続人は相続人の地位にありますので,代襲相続人の特別受益となると解されます。

これに対し,代襲原因が発生する前に被相続人が代襲相続人に生前贈与した場合には,贈与の時点では代襲相続人は相続人の地位にはないことから,特別受益にあたるかどうか見解が分かれています。原則として特別受益にはあたらないけれども,被代襲者への受益と同視できる特段の事情があれば,特別受益にあたるとする見解もあります。

 

六 代襲相続人の寄与分

民法904条の2第1項は「共同相続人中に,被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付,被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは,被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし,第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。」と規定しておりますが,代襲相続の場合はどうでしょうか。

 

1 被代襲者が特別の寄与をした場合

代襲相続人は被代襲者が取得すべきだった相続分を取得することになりますので,被代襲者に特別の寄与があれば,代襲相続人に寄与分が認められるものと解されます。

 

2 代襲相続人が特別の寄与をした場合

代襲相続人が特別の寄与をした場合についても,代襲相続人の寄与が相続人の寄与と同視できる場合には,代襲相続人に寄与分が認められるものと解されます。

 

七 相続させる旨の遺言がある場合

相続させる旨の遺言とは,例えば,「○○に一切の財産を相続させる。」,「○○に□□を相続させる。」といったように,特定の相続人に遺産を相続させる旨記載された遺言のことをいいますが,その特定の相続人が相続開始以前に亡くなった場合,代襲相続人がその遺産を取得するか問題となります。例えば,相続人Aに一切の財産を相続させる旨の遺言がある場合に,相続開始以前にAが亡くなったときは,Aの代襲相続人Bが一切の財産を取得することになるのかという問題です。

この点については,通常,遺言者は,特定の相続人に遺産を取得させる意思を有していたにとどまり,遺言者が代襲者に相続させる意思を有していたとみるべき特段の事情がない限り,効力が生じないものと解されております。
遺言者が,特定の相続人が先に亡くなったのであれば,その代襲相続人に相続させたい場合には,「遺言者より前または遺言者と同時に○○が死亡していた場合には,○○の子(代襲相続人)△△に□□を相続させる。」旨の予備的遺言を残しておくことが考えられます。

 

八 相続人の資格の重複

被相続人が自分の孫を養子とした後,被相続人より先に養子の親である被相続人の子が亡くなった場合,孫には養子として相続人の資格と代襲相続人としての資格が重複することになります。その場合,養子(孫)が,双方の相続分を取得するか問題となりまります。

この点については,肯定する見解と否定する見解がありますが,登記先例では,双方の相続分を取得すると解されております。
例えば,長男,二男がいる被相続人が二男の子(孫)を養子とした場合,肯定説によると,被相続人より先に二男が亡くなったときは,養子となった孫は,養子としての相続分3分の1と,代襲相続人としての相続分3分の1を取得することになります。

 

ページの上部へ戻る

Copyright(c) 2016 ながせ法律事務所 All Rights Reserved.