【労働問題】整理解雇

2016-06-30

1 整理解雇

整理解雇とは,使用者が経営不振など経営上の理由により人員削減のために行う解雇のことです。

整理解雇も普通解雇の一種ですが,労働者の責に帰すべき事由があるわけではなく,使用者の経営上の理由から行われることに特徴があります。

 

2 整理解雇の有効性

整理解雇についても,解雇権濫用規制(労働契約法16条)が適用されるため,客観的に合理的理由がなく,社会通念上相当であると認められなければ,無効となります。

整理解雇が有効かどうかは,①人員削減の必要性,②解雇回避の努力,③人選の合理性,④手続の相当性で判断されると解されています。

①から④のすべてを満たさなければ整理解雇が有効と認められないとする考え(要件説)もありますが,近時は,①から④を総合的に判断して有効性を判断すること(要素説)が多いといわれています。

例えば,人員削減の必要性が高い場合には,他の要素が不十分でも整理解雇が有効と認められることがあります。

 

(1)人員削減の必要性

整理解雇の有効性の判断にあたっては,経営不振など経営上の理由から人員削減をする必要性があるかどうかが考慮されます。

企業が倒産の危機に瀕している場合だけでなく,企業の合理化・効率化の観点から不採算事業を縮小・廃止する場合にも,人員削減の必要があるといえます。

(2)解雇回避の努力

整理解雇の有効性の判断にあたっては,使用者が解雇を回避すべき努力をしたかどうかが考慮されます。

使用者は,新規採用の削減,配転・出向,希望退職者の募集など他の手段をとり,解雇を回避するために努力する義務を負い,解雇回避の努力もせず,いきなり解雇した場合には,解雇が無効となるのが通常です。

 

(3)人選の合理性

整理解雇の有効性の判断にあたっては,誰を解雇するかの選定に合意性があるかが考慮されます。

選定が合理的であるかどうについては,①誰を解雇するかの基準(整理基準)が設けているかどうか,②基準が合理的であるかどうか,③基準が公正に適用されているかどうかが問題となります。

会社への貢献度や,整理解雇によるダメージの低さを基準として選定することは合理性があると解されています。

正社員よりも非正規労働者を先に整理解雇することも合理性があると解されております。

 

(4)手続の相当性

整理解雇の有効性の判断にあたっては,使用者が労働組合や労働者に対し,整理解雇の必要性や時期,規模,方法等につき,説明し,協議したかどうかが考慮されます。

労働協約に協議・説明義務の定めがある場合には,使用者が協議・説明をせずにした整理解雇は無効となりますし,定めがない場合であっても,信義則上,使用者には,協議・説明する義務があると解されております。

 

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