【交通事故】物損 所有権留保の場合

2017-04-13

自動車を分割払やローンで購入した場合,代金やローンの完済するまで売主やローン会社に自動車の所有権が留保されることがあります。

その場合,自動車の買主は,代金等を完済するまで自動車の所有権を有しないことになりますが,完済前に物損事故にあったとき,買主は損害賠償請求をすることができるのでしょうか。

 

一 全損の場合

全損には,物理的に修理が不能な場合(物理的全損)と,修理費が自動車の時価を上回り経済的に全損と扱われる場合(経済的全損)があり,自動車の事故時における時価相当額が損害となります(ただし,事故車両に経済的価値がある場合には,自動車の事故時における時価相当額から事故車両の売却代金を控除した差額)。

全損の場合,自動車の交換価値が滅失されたことが損害となりますので,自動車の交換価値を把握する自動車の所有者が損害賠償請求権を取得します。

そのため,買主が自動車の代金を完済していない場合には,自動車の所有権は売主にありますので,売主が損害賠償請求権を取得し,買主は損害賠償請求をすることはできないと解されます。

もっとも,事故後であっても,代金を完済すれば,買主は損害賠償請求をすることができるようになります。

 

また,経済的全損の場合,廃車せずに修理して使用を続けることもあります。その場合,買主は,修理費を負担することにはなりますが,時価相当額の範囲で損害賠償請求をすることができるものと考えられます。

 

二 修理費

買主が修理して修理費を負担した場合には,買主が修理費について損害賠償請求をすることができます。

修理していない場合でも,買主が修理費を負担する義務を負うときには,買主は修理費相当額の損害賠償請求をすることができると解されます。

 

三 代車使用料

買主が,修理期間中や買替期間中に,実際に代車を使用し,代車使用料を負担した場合には,買主は代車使用料について損害賠償請求をすることができます。

 

四 評価損

評価損は,自動車の交換価値が低下したことによる損害ですから,自動車の交換価値を把握する自動車の所有者の損害です。

そのため,代金等を完済するまでは,買主は評価損について損害賠償請求をすることはできないと解されます。

 

五 まとめ

全損や評価損のように自動車の交換価値が滅失・低下したことによる損害については,自動車の交換価値を把握する所有者の損害となるため,完済していない場合には買主が損害賠償請求することができないのが原則です(もっとも,買主の損害賠償請求を認めた裁判例もありますので,争う余地がないわけではありません。所有権留保は担保の趣旨であり,実質的な所有者は買主であると考えることもできるのではないでしょうか。)。

 

これに対し,修理費や代車料等,買主が負担するものについては,買主の損害として,損害賠償請求することができると解されます。

 

所有権留保の場合,買主と売主等との契約内容によって結論が異なる可能性がありますので,契約内容の確認をすべきでしょう。

 

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