養育費

2014-09-20

子供がいる夫婦が離婚する場合、どちらが子供の親権者となるか決めなければなりません。

また、その際、養育費の支払をどうするかについても決めることになりますが、養育費がいくらになるか、あるいは、話がまとまらない場合にどのようにして養育費を決めるのか、関心があることと思われます。

そこで、養育費について簡単に説明します。

 

一 養育費とは

民法766条1項は、「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」と規定しており、離婚にあたっては、子の監護に要する費用(養育費)を定めなければなりません。

また、民法766条2項は、「前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。」と規定しており、家庭裁判所で養育費を決めることができます。

 

養育費の根拠は親の子に対する扶養義務です。

扶養の程度に関し、生活保持義務(自分と同程度の生活を保持する義務)と生活扶助義務(自分の生活を犠牲にしない限度で、最低限の生活を扶助する義務)がありますが、養育費の支払については、生活保持義務であるとされております。

 

二 養育費の支払はいつから(始期)いつまで(終期)か

1 始期

調停で養育費の支払を決める場合、調停が成立した月から養育費の支払を始めると定めることが一般的です。

また、過去の養育費を請求して争われた事例では、請求時を始期とする例、離婚時を始期とする例、別居時を始期とする例、扶養可能時を始期とする例等がありますが、請求時(調停・審判申立時)を始期とすることが多いようです。

 

2 終期

子が成人に達するまでとするのが一般的です。

もっとも、未成年であっても子が学校を卒業し働いて経済的に自立している場合には扶養の必要はないといえます。

他方、親の学歴や経済力によっては、子が成人に達しても、大学を卒業するまで養育費を支払うとされることもあります。

 

三 養育費の算定方法

養育費は、簡易算定方式及び簡易算定表を用いて算定するのが一般的です。

 

1 簡易算定方式

子が義務者と同居していると仮定した場合に子のために消費される生活費を計算し、これを義務者と権利者の収入で按分して、義務者が支払うべき養育費を算定します。

 

(1)権利者と義務者の基礎収入を算定します。

 

①給与所得者の場合

総収入額から公租公課、職業費(被服費、交通費等)、特別経費(住居費等)を控除した金額であり、概ね総収入の34%から42%の範囲(高額所得者ほど低い)とされております。

 

基礎収入=総収入-公租公課-職業費-特別経費

 

②自営業者の場合

所得金額から公租公課、特別経費を控除した金額であり、概ね総所得の47%から52%の範囲(高額所得者ほど低い。)とされております。

 

基礎収入=総所得-公租公課-特別経費

 

(2)義務者の基礎収入を義務者の生活費と子の生活費に按分した上で、子の生活費を義務者と権利者の基礎収入で按分して、義務者が負担する養育費を算定します。

親の生活費の割合(生活費指数)を100とすると、0歳から14歳の子の割合は55、15歳から19歳の子の割合は90として計算します。

 

養育費                          

=義務者の基礎収入×子の生活費指数÷義務者と子の生活費指数

×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)

 

 

例えば、10歳の子と8歳の子がいる夫婦が離婚し、母(年収100万円の給与所得者で基礎収入は42万円)が子2人の親権者となり、父(年収400万円の給与所得者で基礎収入は152万円)に養育費を請求した場合

 

養育費

=152万円×(55+55)÷(100+55+55)

×152万円÷(152万円+42万円)

=約62.4万円(月額 約5万2000円)

 

(3)権利者の収入が義務者の収入を上回る場合

子が権利者と同居している場合の生活費を基準とすることも考えられますが、その場合、権利者の収入が高くなるほど、義務者の支払う養育費が高くなり、義務者に酷になります。

そこで、権利者の収入が義務者の収入を上回る場合には、権利者の収入を義務者の収入と同一であると仮定して、養育費を計算します。

 

2 簡易算定表

簡易算定方式に基づいて算定される養育費を1万円または2万円の幅で表に整理したものです。

表には、①子1人(0~14歳)、②子1人(15~19歳)、③子2人(第1子、第2子0~14歳)、④子2人(第1子15~19歳、第2子0~14歳)、⑤子2人(第1子、第2子15~19歳)、⑥子3人(第1子、第2子、第3子0~14歳)、⑦子3人(第1子15~19歳、第2子、第3子0~14歳)、⑧子3人(第1子、第2子15~19歳、第3子0~14歳)、⑨子3人(第1子、第2子、第3子15~19歳)があります。

縦軸を義務者の年収(給与所得者の場合と自営業者の場合があります。)、横軸を権利者の年収(給与所得者の場合と自営業者の場合があります。)とし、縦軸から横に延ばした線と横軸から縦にのばした線の交わるところの数値が養育費の金額となります。

年収については、給与所得者の場合は源泉徴収票の「支払金額」であり、自営業者の場合は、確定申告書の「課税される所得金額」です。

例えば、10歳の子と8歳の子がいる夫婦が離婚し、母(年収100万円の給与所得者)が子2人の親権者となり、父(年収400万円の給与所得者)に養育費を請求した場合、簡易算定表によると、養育費は月額4万円から6万円の範囲となります。

三 養育費の請求方法

1 養育費を決める方法

(1)協議

当事者間の協議で養育費を決めることができます。

執行受諾文言のある公正証書にした場合には、債務名義として強制執行をすることができます。

 

(2)調停

協議離婚後に養育費を請求する場合には、相手方の住所地または合意で定める家庭裁判所(家事事件手続法245条1項)に養育費の申立てをすることができます。

また、離婚調停の申立に付随して養育費の支払いを申し立てることができますので、離婚調停の際に離婚と共に、子の親権者や養育費の取り決めをすることができます。

 

(3)審判

審判の申立は、子の住所地の家庭裁判所に申し立てることができます(家事事件手続法150条4号)。

調停を申し立てずに、最初から審判を申し立てることもできますが、付調停とされることがあります(家事事件手続法274条1項)。

調停が不成立となる場合には、審判に移行し(家事事件手続法272条4項)、裁判所が養育費を決めます。

 

(4)離婚訴訟の附帯請求

離婚訴訟の附帯請求として、養育費の請求をすることができます(人事訴訟法32条1項)。

 

2 履行を確保する方法

(1)履行勧告

義務者が義務を履行しない場合、権利者は履行勧告を申し立てることができます(家事事件手続法289条)。

 

(2)履行命令

義務者が義務の履行を怠った場合、権利者の申立てにより義務者に対し、相当の期限を定めて義務の履行を命じる審判をすることができます。義務者が正当な理由なく履行命令に従わない場合には10万円以下の過料に処されます(家事事件手続法290条)。

 

(3)強制執行

調停調書は確定判決と同一の効力がありますし、確定した審判も執行力のある債務名義となりますので、強制執行することができます。

養育費の一部が不履行の場合、期限が到来していない分についても給与その他の継続的給付にかかる債権に強制執行をすることができます(民事執行法151条の2)。

また、養育費の場合、給与債権の差押禁止範囲が4分の3ではなく、2分の1とされております(民事執行法152条3項)。

 

四 養育費の変更

養育費の額を取り決めた後、子の進学や再婚や収入の減少等、事情が変わり、養育費の額が不相当となった場合には、養育費の増額、減額請求をすることができます。

 

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