【相続・遺言】使途不明金

2018-07-09

被相続人の預貯金から多額の引出しがあり,使途不明金があった場合,どのように遺産分割をすればよいでしょうか。

 

一 使途不明金の問題

被相続人の預貯金の口座から使途不明な多額の引出しがある場合,使途不明金の問題として,共同相続人間で争いとなることがあります。

 

1 通帳や取引履歴の確認

まずは被相続人の預貯金の通帳や取引履歴を見て,使途不明金があるかどうか確認します。
通帳については,通帳を管理している人から見せてもらうことになりますが,見せてもらえない場合や古い通帳がない場合には,金融機関から被相続人の口座の取引履歴をとります。
金融機関は,相続開始後,相続人から開示の求めがあれば,基本的に取引履歴の開示に応じてくれます。なお,開示してくれる範囲(10年分の履歴しか開示しない等)や手数料については,金融機関により異なります。

 

2 使途等の確認

口座から多額の引き出しがあり,その使途が不明な場合には,通帳やキャッシュカード等を管理していた相続人や被相続人と同居していた相続人等,引出しに関係していると思われる人に説明を求める等して,①誰が引き出したのか,②使途は何なのか,③被相続人の認識はどうだったのかを確認します。

 

3 遺産分割手続で解決できるか

使途不明金の問題については,遺産分割手続きの中で解決を図ることができる場合とできない場合があります。
遺産分割について,家庭裁判所に申立てをしますが,使途不明金の問題について遺産分割手続で解決することができないときは,地方裁判所や簡易裁判所に民事訴訟を提起します。

 

二 相続開始前の預貯金の引出し

1 被相続人のために遣われた場合

被相続人が,自分で預貯金を引き出し,自分のために遣った場合には,問題となりません。
また,被相続人以外の人が預貯金を引き出した場合であっても,被相続人から預貯金の管理を任された人が,被相続人の入院費等,被相続人のために遣ったときは,金額が妥当であれば,基本的に問題とはならないでしょう。

 

2 他の相続財産として存在している場合

引き出した預貯金が形を変え,別の相続財産として存在している場合には,その財産の種類によって,遺産分割の対象となったり,ならなかったりします。
例えば,預貯金を引き出し,現金として保管してある場合,現金は遺産分割の対象となりますので,遺産分割手続の中で解決します。
他方,預貯金を引き出して,他者に貸し付けた場合,貸付金は可分債権であり,相続開始により各共同相続人の法定相続分に応じて当然に分割されますので,遺産分割の対象とはなりません。

 

3 被相続人から贈与を受けた場合

引き出された預貯金の使途が,被相続人から相続人への贈与である場合には,特別受益の問題となります。
特別受益については,遺産分割の手続の中で解決します。

 

4 被相続人に無断で引き出して取得した場合

被相続人に無断で預貯金が引き出された場合には,被相続人は,預貯金を引き出した人に対し,①債務不履行による損害賠償請求(預金管理の受任者が引き出した場合等),②不法行為による損害賠償請求,③不当利得返還請求をすることができます。
これらの損害賠償請求権や不当利得返還請求権は,相続開始後は相続財産になりますが,可分債権であるため,相続開始により各共同相続人に法定相続分に応じて当然に分割され,遺産分割の対象とはなりません。
相続人間で話合いがまとまれば,遺産分割手続の中で解決することもできますが,話合いがまとまらなければ,別途,損害賠償請求訴訟や不当利得返還請求訴訟で解決することになります。

 

三 相続開始後の預貯金の引出し

相続開始後に被相続人の預貯金が引き出された場合,相続人は,預貯金を引き出した人に対し,損害賠償請求権または不当利得返還請求権を有することになります。
これらの損害賠償請求権や不当利得返還請求権は,相続開始後に発生したものであり,相続財産ではありませんので,遺産分割の対象とはなりません。
遺産分割の対象とならない場合であっても,相続人全員で合意ができれば,遺産分割手続の中で解決することもできますが,合意ができなければ,別途,損害賠償請求訴訟や不当利得返還請求訴訟で解決することになります。
なお,引き出した預貯金を相続債務,葬儀費用,遺産管理の費用の支払いにあてた場合であっても,これらは遺産分割の対象とはなりませんので,相続人全員の合意がない限りは民事訴訟で解決を図ることになります。

 

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